前世は焼きのりだったんじゃないかと思うほど、湿気に弱い私。
梅雨時はげんなりと元気がなく、何をするにも体が重くて、憂鬱この上ありません。
今はオンラインでの作業も多いので、雨の中を移動する鬱陶しさからは少し解放されたけど、窓の外は灰色だし、時間の変化も分からなくて、なんだかしゃきっとしない・・・。
だからたまの晴れの日にはなるべく外を歩きたいと、涼しくてざぶざぶ洗えるmizuiro indのドレスを買いました。

風が通って、さらっと軽やか。本当に気持ちいい。
マスクは暑いけれど、貴重な日光を浴びながら楽しい散歩ができました。今年の夏はこのドレスばっかり着ることになりそうです。
街は、もうすっかりコロナ仕様に定着した感じ。
マスクや手袋をしている人も、お店のアクリル板も日常の風景になりました。電車では間隔を空けて座っているし、窓も開いています。
たった5ヶ月前にはこんな風景、想像もつきませんでしたよね。



5ヶ月後・・・年末には、私たちはどんな日常を生きているのでしょう。洗練されたウイルス対策が徹底されたでしょうか。警戒が解けてもコロナ以前の日常には戻れなそうです。
新型コロナウイルス以外にも、新たな感染症のリスクはいつだってある。だからもう、それ前提で生活するしかないのかもしれません。
もともと挨拶で体を密着させる習慣がない日本では、ソーシャルディスタンシングで戸惑うことは少ないけど、先日ある打ち合わせで久々に仲間たちと会った時には、やっぱり別れ際にハグもしたいし、話しながら肩を叩いたり、そばに寄ったりしたいよなあと寂しく思いました。
別れ際にいつも握手するあの人は今どうしているかなあ。
そうやって互いに信頼を深めてきたんですね、自然と。今まで無意識にやっていたことが急にできなくなって、案外大事だったことに気がつきました。
実は今、オーストラリアの家族とは5ヶ月以上離れ離れ。毎日オンラインでコミュニケーションしていても、やっぱり体をそばに感じられないのってすごく寂しい。
17歳と14歳の息子たちとは、一緒にいれば少なくとも朝の行ってらっしゃいと夜のおやすみの最低2回はハグするし、家の中で何かと触れ合うことも多い。今も毎日当たり前のようにそうしている夫に嫉妬してしまいます。
だから時々、画面越しに代理ハグをしてもらいます。私からのハグだよ!って、夫に息子たちを抱きしめてもらう。
不思議なことにこれでもなんとなくふわっとあったかい気持ちになるんです。
梅雨時の空気は、青空の下でもやっぱり水気を含んでいて、生温い。
ドレスの中を吹き抜ける風がゆるゆると体を包んで、なんだか人肌に触れたみたいな懐かしい気持ちになりました。
うん、湿気も悪くない。雲が切れたら軽やかなドレスに身を包んで、また街に出よう!


Article By Keiko Kojima
小島慶子(タレント、エッセイスト)
仕事のある日本と、家族と暮らすオーストラリアのパースを毎月往復する出稼ぎ生活。 『るるらいらい~日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)、『解縛(げばく)』(新潮社)、小説『わたしの神様』(幻冬舎)、小説『ホライズン』(文藝春秋)、『幸せな結婚』(新潮社)、新刊に『曼荼羅家族』(光文社)がある