「ブラックミュージックを聴きながら手術だYO」【ケビ子の乳がん・ニューライフ vol.11】

Marisol

希望通り個室入院となり、心からほっとしたケビ子。

乳がん・ニューライフ (第10回はこちらから)

第11回はいよいよ手術。いろんな想像をしては緊張した手術も、体感時間はたったの数秒。

【癒しの麻酔部長とほうじ茶】
麻酔の説明は体格の良い年配の男性医師が来てくれた。声が大きく体も大きく、態度は大きくない男性。名札を見たら麻酔科部長と書いてあった。


全身麻酔の経験を問われ、時期と病院名を答えたら、その麻酔部長はなんと同じ時期にその病院に勤務していた!こんな偶然あるかいね、とお互いうれしくなって話し込み、麻酔部長のお腹が大きいのはアルコールではなくパンと生クリームのせいだというところまで知る運びとなった。体の大きさで麻酔の量を変えるのだという説明にこの御仁は自らのたくさんの思い出がマリトッツォのクリームのように詰まったお腹を使って説明をする手法を取ることがわかった。


夫からは麻酔をする際は羊の数を数えなさいと妙なアドバイスをもらったが、私が麻酔を担当するならばバチっと適正量をあてがって秒をカウントせずに効くことに生きがいを感じるだろう。


麻酔のマリトッツォ先生は最後に「手術の場所柄明日は女性が担当しますからね、安心してくださいね」と言って病室を去っていった。こういう些細な配慮がうれしい。個人的に女性の医療従事者への信頼がとても厚い。祖母も親戚も義妹も看護師ということもあり、強く優しく関与しすぎず責任感があるあの感じ。幸い、この病院も多くの女性が活躍しており、とても気分良く過ごせている。


この病院の独自サービスなのか、朝昼晩の食事の30分前に暖かいほうじ茶が配られる。
これがとてもうれしいサービスで、暖かい飲み物の癒し効果を感じる。サーモスの蓋付き保温マグを持ってきて正解だった。


さて肝心の食事。入院中に2キロくらい痩せてみようかと思っていたので、出された食事を半分残して返したところ、栄養士が飛んできて「何か不都合があったら教えてください!味ですか!苦手な食材ですか!」と迷惑をかけてしまったので、余計なことはせずしっかりと食べることにした。
幸い味はとても美味しい。味気ないものは特にないし、塩分を控える分、うまみを効かせた味付けなのだろう。物足りなさはないどころかごはんが多くて困るほど。
ごはんは1食150グラム。日ごろ1食100グラムと決めているダイエット中の私にはなかなか多い。


6月に2週間ほど入院していた母に病院食の写真を送ると「おいしそう、羨ましい」と自分の病院食がさもイケてなかったことを愚痴る。そういうものか。ナポリタンとかとんかつは出ないけど、仕方ないのかとあきらめがついた。
手術前夜も普通に食事を済ませ、19時半からはノンカフェインの水分のみOKとのこと。絶食は苦じゃないので、ストレスはない。
それにしても良く眠れる。


【ブラックミュージックが大音量で流れる手術室でノリノリオペレーション】
手術は朝10時半からの予定と聞いていたが、当日になって私の前に予定していた手術が流れた(どういう理由!)とのことで、10時からとなった。自宅が近いのが幸いで夫も無事間に合い、手術時間が来るまで一緒に待った。個室だからいいよねと湯沸かしポットをもってきてもらった。自由に使ってよいお湯の蛇口があろうことか故障中であったのだ。


私の手術のために来てくれるなんて優しい夫。家族だから当たり前なのかもしれないが、来てほしいと思う私と行きたいと言ってくれる夫。それだけでとっても幸せなのだ。


時間となり、手術室に向かう。手術室の手前で夫と別れる。振り向いて大きく手を振り「元気でね!元気でね!またね!元気でね!」と叫ぶ。にわか今生の別れごっこに看護師は失笑していた。


手術室に入るとすごく寒い。冷房が効いている。私の名前と身長・体重が書いた紙が貼ってあった。見れば落ち込む体重だが、今回はこの肉付きのおかげで切除したおちちの肉を埋めるのだ。我がボディをほめてやろう。中肉中背の熟女一名寝れば余白はほぼない大きさの台に移動。


前日に手術室担当の看護師がリラックスのために手術室は有線をかけるので、リクエストをどうぞと聞いてくれていた。
「じゃブラックミュージックで」と答え、その通りの黒人ラップと重低音のエイトビートが手術室に鳴り響いていた。ブラックミュージックを手術中にかけてくれというリクエストは初めてだったそうで、逆に一般的にはどういう音楽を希望するのか興味がわいた。有線のホームページを見ると手術開始時の時間帯は「朝の雰囲気に合う爽やかなブラックミュージックで心地よい一日の始まりを演出いたします」とのこと。手術が終わる時間帯はちょうどお昼の時間帯が始まったところ。「お昼の時間帯に合わせた、アクティブでアッパーなブラックミュージックをお楽しみください」とのこと。


爽やかなYOYOYOリズムで確かに気分はあがった。ラッブ音楽が流れる中、血圧を測る看護師が優しく「そばにいますからね」と安心のあまり涙を流した私は呼吸器を装着して「よろしくお願いします」と言った直後に意識が飛んだ。羊の数なんて数える余裕もなくタイムマシンに乗り、目が覚めたら再びエイトビートが耳をつんざいた。
ドゥドゥドゥドゥドゥン。
体感時間は5秒もない。
それが私の乳がん手術であった。


【手術をしてもふざけた性格は変わらず】
1時間30分の予定と聞いていた手術だったがおおよそ予定通りで終わり、手術室を出たら夫が何かしゃべっていた。
主治医が「この病院の手術室担当は手厚すぎるくらい手厚いから、しっかりと目覚めるまでは手術室を出ないから安心してね」と事前に言われていた通り意識がしっかりとしている。
夫の姿が見られてうれしい。とにかくそれだけ。


一緒に病室にも行けないなんて。せっかくの個室なのに。夫とは手術室の前で別れた。
あちこちワイヤードな状態で部屋に戻る。ガリバー気分だ。
病室に戻ってほどなく吐き気を感じて吐き気止めの点滴を入れてもらった。
それにしてもこの点滴はすごいな。ものの数秒で吐き気も痛みも緩和される。私はお金を払った分、望むように生かされている。そういう印象を持つ点滴。
手術の後なので、自分のろくでもない思考をこうして確認しつつ、足先も動かしながら気が付くと寝ていた。


目覚めて夫に連絡を入れた。
「ちんぽけ」
「もうスマホが使えるのか。頑張ったね、でもまだタイプミスがある。ゆっくり休んで」
日ごろ下ネタばかり言っている妻は術後すぐに夫に「ちんぽこ」と書いて笑いを取ろうとしたがあろうことか打ち間違いをした。優しい夫の指摘が恥ずかしく一人笑ったら体が痛かった。



つづく

*次回【Vol.12】は5/27公開予定です
 
※この記事はケビ子さんの体験に基づいて書かれており、2021年12月現在の情報をもとにしています。
治療等の条件はすべての方に当てはまるわけではありません
カモチ ケビ子
43歳で結婚、47歳で乳がん。
心配性の夫、奴さん(やっこさん)はなぜか嬉しそうに妻の世話を焼いている
Instagram(@kbandkbandkb)ピンクリボンアドバイザー(初級)資格保有

 

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