”お約束通り”のSEXが嫌ならやめていい。北原みのりさん&長田杏奈さん「私たちが性を語ったらダメですか?」

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フェムテック市場が盛り上がり、女性による女性のためのセルフプレジャーにも注目が集まる昨今。これまでタブー視されていた「女性の性」が、少しずつオープンになってきています。とはいえ、「自分の性事情を家族や友達とシェアするのはちょっと…」と考えている人が多いのが現実。そこで、女性のセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」代表の北原みのりさんと、各メディアで現代の性のあり方を取材し続けるライター長田杏奈さんに、本来あるべき性の話を語っていただきました。

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北原みのりさん

ラブピースクラブ

北原みのりさん

日本におけるフェミニズムの第一人者。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表を務め、性差別や性暴力のない、女性が性を安心して楽しめる社会を目指して女性運動などにも積極的に参加している。

美容を中心に、インタビューやフェムケアなど、数多くの雑誌で記事を執筆する人気ライター。豊富な取材経験から、『美容は自尊心の筋トレ』(ele-king Books)、『エトセトラVOL.3 特集:私の私による私のための身体』(エトセトラブックス)など、自身の著書も刊行している。定期的に配信するPodcast『長田杏奈のなんかなんかコスメ』、ニュースレター『なんかなんか通信』も人気。

日本のメディア作品では男性目線で描かれることが多い性表現。海外では…

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海外の性事情にもお詳しいお二人ですが、日本と海外での女性の「性」や性表現の描き方についてどう思われますか?
北原みのりさん(以下、北原):海外の映画やドラマでは、2000年代から女性の性についてとてもオープンに描かれていますよね。日本ではセックスは「いやらしいもの」としてフタをされがちだけど、海外では結構明け透けに表現されていて、とてもヘルシー。
長田杏奈さん(以下、長田):以前読んだ北欧の推理小説で、老人ホームでの色恋(ラブシーンあり)が当たり前に描写されていたのにカルチャーショックを受けました。日本だと「いい年して恥ずかしい」ってなりそうだけど、北欧だとごく自然なこととして描かれているんですよね。一方、日本の性描写ってすごく湿度が高い。「濡れ場」、「秘め事」、「恥部」や「陰部」などの表現しかり、陰湿なイメージですね。
北原:本当にその通り。AVも「俺のテクニックとペニスで女をイカせてやる」っていうものが多い。優しいセックスより、征服するためのセックスばかり描かれていますよね。
長田:そういう偏ったポルノコンテンツを鵜呑みにして育った男性は(もちろん全員がそうではないけど)、パートナーにも同じことをしてしまう。「ほら、俺ってすごいだろ。もっと喘いでいいぜ」みたいな。女性サイドの性についての知識や尊厳がぼんやりしていると、そのやり方に飲まれてしまうんですよね。
北原:男性優位で女性が苦しそうな表情をしながら喘いでいる表現ばかりなのも残念。日本のAVは、女性を虐げているような作品が多いですが、国によっては暴力表現が禁止されていたりなど、厳しい基準があります。

実は、疲れるセックスをしてるっていう女性が多いのかもしれない

長田:日本人女性の「おもてなし精神」は、実はセックスの時にフルスロットルで発揮されている気がする…。
北原:わかる! 常に男性の反応を気にしつつ、オーガズムはおろか、感じることすらできずに演技に徹している人は多いと思う。ポルノコンテンツで培った歪んだ知識と見よう見まねのテクニックで繊細な女性の体を触るなんて、本当にやめてほしいですよね。
長田:好ましい人とするセックスって本来とても幸せなことのはずなのに、義務感でやりたくないことをやっているなんて勿体なさすぎる。したいという欲望も大切だけど、したくないと思う気持ちも同じように尊重されるべきですよね。


”お約束通り”のSEXが嫌ならやめていい。北原みのりさん&長田杏奈さん「私たちが性を語ったらダメですか?」_3

北原:ふだんは優しいのに、セックスの時に急に暴力的になる男性っているんですよね。セックスのときこそ、優しく、尊敬をもって、女性には接してほしい。フェラチオの強要や強引な挿入など、男性の気分が盛り上がっているからって許されることではないですよね。
長田:海外のデータで、シスヘテロ*、男女間のセックスよりもレズビアン同士のセックスのほうがエクスタシーを得られるという結果が出ているんですが、これには妙に納得。イカせてナンボの征服的なセックスや、男性を悦ばせなくてはというプレッシャーが快楽の邪魔になってる…。
北原:対等だからこそ、お互いのエクスタシーが高まるんでしょうね。追求すれば女性だっていくらでも気持ちのいいセックスができるんです。毎回、お決まりのルーティンで男性の性欲と自尊心だけを満たす「お約束セックス」は、もうやめましょう! 
* シスヘテロ=シスジェンダー(自認する性と戸籍上の性が一致していること)、ヘテロセクシュアル(異性愛)の略称。

女性の性欲だって、もっとケアされるべき!

北原:日本の社会は男性の性欲にとても甘いんです。性産業がこんなに大きい国って珍しいんですよね。女性の性には厳しいのに、男性にはとことん甘い。これって、とても差別的ですよね。
長田:確かに。男性のオナニーは「必然」とされる一方で、女性がすると「はしたない」と片付けられてしまうのは、なんだか納得いかないですね。
北原:20年ほど前に性学者のベティ・ドッドソン*に会いに行ったことがありました。性欲に年齢制限はなくて、何歳でも楽しめるんだってこと、彼女のことを見ていると実感します。先日、テレビで彼女が紹介されていたんですが、今、80歳を超えているけど、肌ツヤが抜群によくて、本当に健康的でした。1970年代のウーマンリブの時代から「セルフプレジャーこそが女性の解放である」と訴えていて、実践してこられた方です。そういう人を見ていると、女性の性を、私たち自身がもっと大切にすべきだと実感しますね。
長田:セルフプレジャーについての取材も増えてきたけど、プレジャートイがもっと身近になったら素敵ですよね。
* マスターベーションの母とも呼ばれる、アメリカのフェミニズムの第一人者

私たちは、どうしたら気持ちいいセックスができる?

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男性と女性では、セックスの目的自体が違う気がしますが…。
北原:そうですね。男性の多くはセックス=射精ですが、女性はそうではないですよね。
長田:身体的な快楽だけでなく、精神的な満足感や安堵感を求めている人が多い気が…。
北原:実際、男女の間には「オーガズムギャップ」というものがあって、男性は98%がオーガズムを得られるのに対し、女性はその1/3程度しかオーガズムを得られないというデータがあるんです。
長田:男性は射精がクライマックスだと思っているけど、女性は前戯の方が気持ちいいという人もいますよね。セックスにオーガズムだけを求めているわけでもないから、スキンシップが取れるだけで満足派も。
北原:世界的に見て一番売れているセックストイは、男女共に楽しめるカップルトイ*なんですけど、日本では全く売れないんです。その理由は、日本人のセックスは二人で楽しむという意識が低いということと、何より「ペニス至上主義」の考え方にあると思うんです。
長田:わかる気がする。男性器挿入でイカせてナンボっていう安直さ。
北原:「いろいろやっても俺のが一番気持ちいいだろ?」というスタンスが、本当によくない。もっと女性の体を知る努力をして、お互いに気持ちいいセックスができたらいいですよね。
長田:セックスが楽しめてない人には、「SEX TALK CARD」がおすすめ。セックスに抱くイメージへの質問などが書かれているんだけど、それに答えることで自分の中に隠れたトラウマや理想のセックスが見えてくるから、自己探求はもちろん、パートナーとも試してみてほしい。
* 男性器と一緒に膣に挿入しながらクリトリスを刺激するなど、男女ともに楽しめるセックストイ

セックストークカード

SEX TALK CARD ¥3500/LimLove


セックスやセクシュアリティの会話のキッカケをつくるコミュニケーションカード。50枚のカードに書かれた質問に答えることで、自分のセクシュアリティを知り、性に対する不安や羞恥心、罪悪感の存在を探る。パートナーとのリレーションシップも深まる。

SATCみたいに「性」はもっとオープンに話し合っていいんじゃない?

長田:セックスについてパートナーと話し合うって、相当関係性がしっかりしていないと難しいですよね。
北原:カップル同士に限らず、もっと安心してオープンに話せる場所があってもいいですよね。

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長田:セックスの話ってあまり人と共有しないけど、いざ話し始めるとすごく楽しいし止まらない(笑)。アメリカのTVドラマ『SEX AND THE CITY』で性をアグレッシブに極めようとするサマンサという女性がいましたけど、彼女のキャラクターはかなりセンセーショナルでしたね。20年以上前の作品とは思えない。
北原:「こういう女性がいていいんだ」と思えたことはとても大きかったと思う。承認欲求を満たすためのセックスではなく、「私は私が大好きだから、セックスに愛は求めない」っていう姿勢は見ていてすごくスカッとしましたよね。
長田:彼女の自己肯定力は素晴らしかったですもんね(笑)。
北原:自分の中のエロスを認めることで、自由になれる部分は大きいと思う。でも、エロスの発散の仕方は人それぞれ。セックスをして解消したい人もいれば、好きなアイドルを愛でることで満たされる人もいる。
長田:性的ファンタジーは十人十色。ムラムラを解消するのは挿入を伴う性交だけではないですよね。それこそプレジャートイを使うという方法もある。最近はどんなのがあるんですか?
北原:フランスの女性がマスターベーションのタブーを無くそうと作った「ピュイサント」というプレジャートイがとてもおすすめ。これ、なんとクラウドファンディングから生まれたんです。

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ピュイサント ココ ¥18700/ラブピースクラブ
バイブレーションでクリトリスと膣内を刺激。さらに吸引機能がクリトリスを心地よく刺激する。

長田:プレジャートイをクラファンで作る日が来ようとは…!
北原:自分と向き合うために自分の性器を鏡で見てみたり、感じる場所を探したりすることはとても大切。相手に粗末にされないためにも、まずは自分が自分を尊重することから始めましょう。
長田:自分の身体や快楽と丁寧に向き合えば、意識も変わってきそう。「私の美しいカラダを汚い手で粗末に扱わないで!」ぐらいのプライドを持っていいんじゃないかな。

女性の性を目覚めさせる、おすすめ作品

いわゆる官能作品ではなく、性について明るく語った作品をリコメンドしていただきました。女性の性についてのネガティブなイメージを払拭し、当たり前に受け入れていいものだということを認識させてくれる作品をピックアップ。

『あなたのセックスによろしく 快楽へ導く挿入以外の140の技法ガイド 』

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『あなたのセックスによろしく 快楽へ導く挿入以外の140の技法ガイド』(ジュン・プラ著)¥1760/CCCメディアハウス
挿入以外で快楽を得られる、140ものテクニックを紹介した本。「シンプルな図解と解説で男女のエクスタシーを刺激し、セックスの可能性を広げてくれます。ジェンダーやセクシュアリティを問わず参考にできるはず」(北原さん)

『私の名前はキム・サムスン』

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『私の名前はキム・サムスン スペシャルプライスDVD-BOX』 ¥5500/アミューズソフト
(C)All Rights Reserved by MBC 2006
恋も仕事も失敗続きのパティシエ女性と、傲慢なイケメン御曹司の恋模様を描いた人気ドラマ。「韓国の性に対する先進性を感じた作品。2000年代に、ここまで女性の欲望をオープンに描いたアジア作品はないのでは? 30代女性の性欲や性生活がすごくリアルに映し出されています」(北原さん)

『禁断の果実 女性の身体と性のタブー』

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『禁断の果実 女性の身体と性のタブー』(リーヴ・ストロームクヴィスト著)¥1980/花伝社
女性の体が、これまで歴史的にどう描かれ、どう定義づけられ、どう語られてきたかがユーモラスに描かれたコミックエッセイ。「例えば、魔女裁判ではクリトリスを“悪魔の乳首”と呼び、忌まわしいものとして扱われていたとか、あり得ないようで本当にあったエピソードが読みやすいコミックで描かれています。自分達の中に刷り込まれたタブーがどれほど馬鹿らしいものか気付かされた1冊」(長田さん)

『これからのヴァギナの話をしよう』

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『これからのヴァギナの話をしよう』(リン・エンライト著)¥2420/河出書房新社
これまで医学的に取り沙汰されることのなかった女性器について、ジャーナリスティックに綴られた話題作。「これまでフォーカスされてこなかったヴァギナやヴァルヴァ(クリトリス)についてさんざん仔細に綴った後、私たちは性器を超えた存在なのだと手放す軽やかさが好き」(長田さん)

取材・文/野崎千衣子 イラスト/芝りさこ 構成/佐藤 陽(MAQUIA ONLINE)
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August 10 Wed
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