伝統文化の美しさに惹かれる!50代で始める「和稽古リスト」

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日本の文化が凝縮された「茶道」

「集中して、無になれるから、絶大なデトックス効果あり!」

スタイリスト 青木貴子さん

スタイリスト 青木貴子さん

ファッションスタイリスト、ファッションディレクター。雑誌や広告を中心に活動。ジュエリーブランド『allan』のデザイナーも務めている。

きものを着たくて始めた茶道。季節を感じられるのも魅力

小雨が降る都内某所、スタイリストの青木貴子さんは、淡い色調になでしこの花が描かれたきもの姿で現れた。
「お茶は10年以上習ってるんですけど、去年からなるべくお稽古もきもので行こうと思って。お茶を習おうと思った理由のひとつに、きものを着る機会を増やしたいというのもありました」

青木さんが師事しているのは、裏千家茶道正教授の桜井宗幸先生。友人の紹介でこのお稽古場に通いはじめた。
桜井先生は凛としたたたずまいでありながら、朗らかな笑顔とユーモアに富んだ会話でいつも和やかな雰囲気。青木さんのお点前(てまえ)を見て的確にアドバイスをしていく。所作は見た目の美しさだけでなく心がこもっていることが大事。

「お稽古場では、季節感あふれるお軸やお花、道具などに触れられます。仕事柄、夏に秋冬ものを扱うなど、とかく季節が狂いがちなので、“今の季節”が実感できるのも魅力のひとつです」

この日、お稽古場の軸は滝、お点前に使った平茶碗に描かれていたのはなでしこ。偶然、青木さんのきものとおそろいだった。
「茶道には日本の文化がつまっています。茶道の“道”は、自分の人生をより豊かにしていくための道。日本文化を見直す機会にもなり、無限の可能性を秘めています」(桜井先生)
お茶を点(た)て、すっとさしだす青木さん。平茶碗は夏によく用いられ、いかにも涼しげ。千利休は「夏はいかにも涼しきように。冬はいかにも暖かなるように」という言葉を残している
きめこまやかな泡を立てられるかどうかがおいしい抹茶の決め手で、なかなかむずかしいもの。「家でお菓子を買ってきたときに、自分で抹茶を点てることがあります。お菓子もさらにおいしく感じられます」(青木さん)
桜井宗幸先生の稽古場。桜井先生が季節に合わせて軸や花、茶道具を選んでおり、それを拝見するのも楽しみのひとつ

奥深い「古筆」の世界

「若いときより出てきた学びの欲。年齢を重ねたからこそ、やってみたい」

スタイリスト 青木貴子さん

スタイリスト 青木貴子さん

ファッションスタイリスト、ファッションディレクター。雑誌や広告を中心に活動。ジュエリーブランド『allan』のデザイナーも務めている。

単にきれいなだけでなく、自分らしい字を探したい

数日後、黒いニットのセットアップというシックな装いの青木さんは、真剣な表情で筆を動かしていた。ここは古筆を研究している関口研二さんのアトリエ。古筆とは、平安から鎌倉時代にかけて書かれた和様の優れた名筆のことで、青木さんは3年前からここに通っている。
「書を学ぶときは、どんな字を書きたいかを明確にすることが大切です。私はかなをきれいに書きたいと思い、始めました。単にきれいなだけではなく自分らしい字を探したいという気持ちもありました」

青木さんがこの教室を知るきっかけになったのは、スタイリングを担当したあるモデルだった。撮影で彼女が短冊に文字をしたためているところを見て、文字の美しさに心惹かれた。
「図々しいと思いつつ、そのモデルさんにどこで習っていらっしゃるのかおうかがいして、紹介していただいたんです。彼女の字を見たときの直感は間違っていなくて、関口先生の書は本当に素敵。まさにこれこそ私が習いたかった字! 古筆を通して、短歌や俳句などにも興味が広がりはじめました」

関口さんのアトリエでは、週2日生徒を受け入れていて、好きな時間帯に行き、好きなだけ書と向き合える。
「日本の美術の中で一番優れているのが書道だと思うんです。書の世界はピュアな世界。効率が求められる現代で、手で書くという行為を通して、自分の心を掘り下げていける楽しみがあります」(関口さん)
継続できている理由はほかにもある。
「大前提としてお茶もお習字も楽しいというのが大きいです。そして、お稽古の時間はそこに集中してほかのことを何も考えないので、その時間が気持ちいいんです。40代のころにサーフィンに通っていたことがあって、サーフィンも波のことしか考えない状態が心地よかった。夢中になれることって日常ではなかなかない。マインドリセットとデトックスの効果は抜群です(笑)」

中国の陽明学の命題のひとつに「知行合一(ちこうごういつ)」というものがある。「知ると行うをひとつにすること、知識は行動を伴ってこそ初めて完成される」という意味で、青木さんは和稽古を通して、そのことを実感している。
「若いころより学びへの欲が出てきました。茶道、書道など“道”のつくものは、精神的なものと深く結びついています。道は必要なときに現れるといいますし、年齢を重ねたからこそ、道に入ってみたい境地になったと思うんです」
先生が書いた手本を見ながら書いていく。4文字からスタートし、今は5〜6文字を練習中
「今はまだ漢字で、かなにはいたっていません。家でも時間をつくって練習しています」
手本の横に文字を書いたら、先生に見てもらう。「これなんてすごくいいんじゃない?」とほめられると、笑みが浮かぶ
今年1月、青木さんも書展に初出展。「下手すぎて泣きたくなりましたけど……。書いたのは私が好きな川端茅舎(かわばたぼうしゃ)の俳句。題材を探す過程も楽しかったです」(青木さん)

日常を離れ、香りを聞く「香道」

香道具専門店で学ぶ、奥深き香りの世界

江戸寛政年間から続く京都の薫香原料輸入卸元「山田松香木店」七代目次男が独立し、1983年に麻布十番で開業した香木・香道具専門店「香雅堂」。2階で志野流香道などを学ぶことができる。少人数制で入門クラスは満席だったが、7月から新規クラスを開講予定。客、香元(お香をたく人)、執筆(記録を書く人)の作法を学んでいき、1回の稽古は約2~3時間。季節に応じた2つの組香(香りの聞き分け)を行う。「香道具専門店で本格的に学ぶことができ、お香文化の現代的な広がりを肌で感じていただけます」(代表・山田悠介さん)。
志野流香道とは、志野宗信を流祖とする香道流派。現代の香道は、和歌や物語文学の世界を主題にした「組香」が主流。香道をあえてひと言で表現するならば、「みんなで集まって香りを聞き分ける遊戯をする」というもの。香りを通して季節の移り変わりや、源氏物語などの日本文学などに触れることができるという。静寂の中で香りに触れ、自分と向き合うこともできる
写真提供/麻布 香雅堂

DATA
麻布 香雅堂 十番教場

入会金¥5,000(2回目の参加より発生)、月1回¥5,000(月2回¥8,000)、別途雑費。道具代などは基本的に不要。

初心者対象の入門は7/10より新規開講。

http://www.kogado.co.jp/
☎03・3452・0351

季節を感じる「和菓子」

季節感あふれる和菓子を鎌倉の地で学ぶ

鎌倉の「鎌倉創作和菓子 手毬」は、創作和菓子作家の御園井裕子さんが主宰しており、「茶寮てまり」でお茶を味わい、工房で繊細な和菓子を購入することができる。店の一角では体験講座も開催。「和菓子一般教室」に参加すると、会員制和菓子講座「四季の会」に入会できるようになる。初級〜上級があり、年4回季節ごとに開催。和菓子の基本はもちろん、生地作りや和ケーキなど、季節に合わせたメニューを学べる。参加者からは、「ふだん買っている和菓子が自宅で簡単に作れるようになり、プレゼントすると喜ばれる」という声も。
季節を表現した芸術性の高い和菓子・練り切りは、お茶会や祝いの席など、特別な場面で振る舞われることが多い。同店では、自然への感謝の気持ちを大切に、その日の素材や気候を指や手のひらで見極めて作る、手作りにこだわっている
写真提供/鎌倉創作和菓子 手毬

DATA
鎌倉創作和菓子 手毬

会員制和菓子講座「四季の会」は入会金¥11,000、講座料¥5,500〜(材料費別)。季節に合わせた和菓子や創作和菓子を、自らの手で作る楽しみを学べる。

http://temari.info/
☎0467・33・4525

幅広い層に人気「日本舞踊」

2歳からシニアまで幅広く、基礎からていねいに指導

阿佐ヶ谷で約60年続く稽古場で、藤間勘右衞門派師範の藤間亜寿賀さんが指導を行う。モットーは「無理をしないで、日本舞踊を楽しむ」。個人稽古では藤間流古典舞踊を基礎からていねいに稽古する。2歳の子供から大人まで幅広いクラスのグループレッスンがある。藤間さん自身が子供2人を連れて稽古場に通っていたとき、師匠や周囲の人に支えられた経験から、子育て中の稽古も大歓迎という。「気軽に始めてみて、ぜひ日本舞踊を身近に感じてほしい」(藤間さん)。
曲にはストーリーがあり、その内容を三味線にのって体で表現するのが日本舞踊。稽古を通して自分色の踊りを引き出し、個性を輝かせることを大切にしている。グループレッスンでは男性クラスもあり、日本舞踊の広い普及を目ざす

DATA
藤間亜寿賀 日本舞踊教室

入門料¥5,000、個人稽古(大人)は月4回¥8,000〜、グループレッスン(大人)は月3回¥4,000。体験稽古は¥1,000で、貸し出し用の浴衣もある。

https://fujima-asuka.com/
☎080・4401・6801

和モダンアート「水引」

エクラ 華組 鈴木たま江さんが体験!

エクラ 華組 鈴木たま江さんが体験!

「フランスの伝統工芸・カルトナージュを習ったことがあり、歴史あるものに携わるのが好き。水引にはさまざまな意味があり、それを実感できたのがよかったです!」

さまざまな意味がこめられた水引。現代の空間やファッションにも合う

ご祝儀袋などで見かける水引。諸説あるが、遣隋使が日本に持ち込んだともいわれており、未開封を保証する、魔除け、人と人を結びつけるといった意味がこめられているという。水引作家の田中杏奈さんは、水引の素材の美しさや結びの奥深さに惹かれて創作活動を開始。「幼いころから伝統文化や手仕事に興味がありました。子供のお食い初めのときに水引で飾りつけをしてみて、水引にハマりました」(田中さん)。水引にはさまざまな色や結び方があり、アレンジしだいで和洋どちらにも合う。インテリア雑貨やアクセサリーなど自由度の高さも魅力だ。
好きな色の水引を選び、基本の「あわじ結び」を習う。「水引は所作が大事。正しい所作で行えば、きれいに結べるようになります」(田中さん)
水引は5本1セットが基本で、慣れたら増やしていくが、初心者は1本から練習。鈴木さんは水引初体験ながらも、指先の動きが美しく、様になっている
鈴木さんが完成させた「あわじ結び」。「真剣になって何個も作ってしまいました。色の組み合わせで印象も変わるし、楽しい!」(鈴木さん)
定期教室で作る水引の数々。立体的な作品もある

DATA
水引結び教室 晴れ

定期教室には初級〜上級がある。全6回¥42,900〜。年内の定期教室は満員だが、オンラインクラスも開講。単発ワークショップもあり。場所はPaper Tree(九段下)。

@__harenohi(Instagram)
☎03・3261・9884(Paper Tree 定期教室問い合わせ)

小粋な「三味線」

三味線の音色とともに、恋心や季節を唄う楽しみ

谷中と浅草にある小唄と三味線の教室で、春日とよ喜裕美さんが稽古をつけている。唄、三味線、唄と三味線から選べるが、大半は唄と三味線を選択。10代から最高齢は96歳と幅広い年代の人が通い、「お稽古を積み、いろいろな曲を覚えられるのが楽しい」「粋な小唄にハマりました」という声も。
写真提供/東京小唄・清元・三味線教室

DATA
東京小唄・清元・三味線教室

レッスンは個人2回、グループ1回の月3回。入会金¥10,000、月謝¥13,000。
無料体験、三味線の貸し出しあり(稽古場内のみ)。
https://kiyuumi.com/

☎03・3823・5782

和の刺繡「津軽こぎん刺し」

独自の幾何学模様は、とてもモダンで魅力的

「津軽こぎん刺し」とは、藍の布地に白い綿糸で「モドコ」と呼ばれる幾何学模様を刺し上げる津軽地方の伝統工芸。名古屋、神戸など9都市で開講し、人形町教室では、代表で86歳の髙木裕子さんが指導。基礎コースを学んだあとは作品を制作。朗らかな髙木さんの高度な技術と人柄に惹かれる生徒多数。
写真提供/こぎん刺し木曜会

DATA
こぎん刺し木曜会

講師歴50年以上の髙木裕子さんが蓄積した高度な技術や独自の図案を学べる。
年会費¥6,000、月謝¥7,300(月2回、材料費別)。

http://www.koginsashi.jp/
☎03・3665・0002

修復技術「金継ぎ」

エクラ 華組 成田千恵さんが体験!

エクラ 華組 成田千恵さんが体験!

「以前から金継ぎに興味をもっていました。たくさんの工程があるのには驚きましたが、思わず集中してしまいました。スペースをとらないので、家でもできそうです!」

江戸時代から続く漆専門店で学ぶ、漆による本格的な修復技術

金継ぎとは、割れたり、欠けたりした陶磁器を、漆を使って修復する技術のこと。漆による接着は8000年前から行われているといわれ、金による装飾は江戸時代からとのこと。江戸時代から続く漆専門店「播与漆行」では、漆を使った本格的な金継ぎ技術を学ぶことができ、漆を乾かす時間を活用して漆塗りや蒔絵(まきえ)などにも挑戦できる自由度の高さが魅力。

「東日本大震災以降、壊れた器を直したいと習われるかたが増えました」(代表取締役・箕浦和男さん)。工程が多く、繊細な作業も多いが、少人数制で講師がていねいに指導している。
金継ぎは工程が多く、完成まで約2カ月かかることもあるため、主な作業をお試しで体験した。これは、割れた断面に生漆と強力粉を練ったものを塗り、破片をくっつける作業
竹へらを使って、欠けた部分に漆を塗る。「断面に漆を塗る作業は時間がかかるのですが、成田さんは早いですね!」と講師の陳さん

漆で接着した部分に、弁柄漆と生漆を混ぜたものを蒔絵用の細筆につけ、はみ出さないようになぞる。これが金粉の糊がわりになる。均一に塗る必要があり、神経を使う作業だ

弁柄漆と生漆でなぞった部分に金粉をふり、綿で軽くふき取る。これこそ「金継ぎ」の醍醐味! ただし、この工程にたどりつくまでが大変

余分な金粉をとれば完成! この日の講師は陳博文さん。中国にも漆はあるが、日本の漆工芸や蒔絵に惹かれ、東京藝術大学に留学。第一線で活躍する講師陣から学べるのも魅力

DATA
はりよ 金継ぎ教室

1回2時間、月1〜3回コースから選べる。入会金¥11,000、受講料¥6,930〜(漆代込、教材費別)。見学可能。「金継ぎ初心者セット」購入者は無料体験講座あり(1回)。

http://www.kintsugi.tokyo/
☎03・3834・1528

気軽に体験「レッスンスタジオ」

共通チケット制なので、1回完結で気軽に試せる

共通チケット制でいろんなレッスンに参加でき、1回完結ものも多い。本格的に学びたいと思ったら、免状が取得できるカリキュラムに参加可能。1回完結で人気なのは、「筆ペン美文字レッスン」「友禅染め」「つまみ細工」「12ヶ月の和花(いけばな)」など。表参道と日本橋(一部レッスンのみ)にスタジオがあり、通いやすいのも魅力。

つまみ細工

Ⓒ和のレッスンスタジオWAnocoto
Ⓒ和のレッスンスタジオWAnocoto
和装髪飾りのイメージが強い「つまみ細工」だが、“大人の女性がふだん使いできる”をコンセプトに、アクセサリー的なデザインを得意とした講師を起用。
Ⓒ和のレッスンスタジオWAnocoto
Ⓒ和のレッスンスタジオWAnocoto
つまみ細工の技法で作った蝶のブローチ。材料や道具はすべて教室に用意されているため、手ぶらで受講ができるのもいい

友禅染め

Ⓒ和のレッスンスタジオWAnocoto
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友禅染め(基礎編)では、筆を使った手描友禅の技法を用いて、風呂敷、エコバッグなど毎月決まったテーマを1回で仕上げる。図案は、あらかじめ下絵が描かれた素材に染めていくため、絵が描けなくてもOK。基礎編を2回受講すると、下絵から自分で描く応用編に進むこともできる。
Ⓒ和のレッスンスタジオWAnocoto
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DATA
WAnocoto

共通チケット制。入会不要でそのつど利用できるビジターチケット(¥5,450)と、お得なメンバーチケット(¥4,240〜、別途入会金¥5,500)がある。

https://wanocoto.com/

☎03・5772・6663

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「興味のある分野を、じっくり勉強したい」「幼いころに憧れて、かなわなかった習い事に挑戦したい」「資格を取得し、仕事に結びつけたい」。さまざまな思いを胸に、アカデミックなものから趣味的なものまで、今、再び学びの門をたたく人が増えている。子育てが一段落するなど、時間やお金にも余裕が出てくるアラフィー世代は、学び直しのベストタイミングなのかもしれない。人生100年時代の折り返し地点、この先もっと輝くために、まずは一歩を踏み出してみよう。
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撮影/藤澤由加 露木聡子 取材・文/吉川明子 ※エクラ2022年8月号掲載
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