【市川紗椰の週末アートのトビラ】金沢21世紀美術館「時を超えるイヴ・クラインの想像力」展をご案内【後編】

@BAILA
市川紗椰がご案内 週末アートのトビラ

市川紗椰さんがアートを紹介する連載。第9回は金沢21世紀美術館で開催中の「時を超えるイヴ・クラインの想像力」を訪問しました。前後編の後編となる今回は、金沢21世紀美術館館長 長谷川祐子さんと対談! 金沢21世紀美術館の魅力もたっぷりと紹介。

【市川紗椰の週末アートのトビラ】金沢21世紀美術館【前編】はこちら

今月の展覧会は…時を超えるイヴ・クラインの想像力 ― 不確かさと非物質的なるもの

トビラの奥で聞いてみた

展示室のトビラの奥で、教えてくれたのは…金沢21世紀美術館館長 長谷川祐子さん

市川 ブルーの顔料を地面に敷いた『ピュア・ブルー・ピグメント』は、太陽を浴びる青の質感に引き込まれました。

長谷川 今回、初めて外光の下で展示された作品です。「色は生きている」というクラインの言葉に従い、顔料そのものを自然の中に返すことで、彼が本来見せたかった姿を表すことができたのではないかと思います。

市川 作品自体が扉、ゲートウェイのように感じました。飛び込んで、染まってしまいたくなるような引力がありますね。

長谷川 青を媒介として、人の精神性が外に溶け出し、空間と一体化する、と彼は言っています。色そのものを全身で浴びるという市川さんの感性は、クラインの正しい鑑賞の仕方だと言えますね。今、イマーシブ(没入感)という言葉がよく使われますが、五感で体験する“青色浴”は、現代にこそ必要とされるものかもしれません

市川 今も生きていたら、どんな活動をしていたでしょう?

長谷川 とてもテンションが高く、信念の人だったので、様々なことに挑戦していたでしょうね。彼が行ったパフォーマンス『非物質的絵画的感性領域の譲渡』は、注目のNFT(代替不可能なデジタルデータ)の特権性と関連して考えることができるし、メタバースにおける儀礼性などもはらんでいます。それから、彼の構想した『空気の建築』のような非物質的な建築も実現していたかもしれません。

市川 新しく建物を作るのは資源がもったいないという時代に、空間の感じ方を変えるだけで成立する『空気の建築』はぴったりですね。そういえばこの展示空間も、クラインの作品のために用意されたかのように感じました。

長谷川 何を隠そう、美術館建設前の準備室時代に、私が展示室のひとつを2倍の天井高に指定したのは、ここに『空気の建築』を置きたいと思ったからなんです。

市川 なんと、展覧会どころか開館の前から考えていたとは!

長谷川 はい、約25年間ずっと覚えていたんです。キュレーターってそういうものなんですよ(笑)。

市川紗椰 クラインによる様々な色のモノクローム作品。頭上は同時代の前衛美術集団「具体」の作家元永定正の『作品(水)』

クラインによる様々な色のモノクローム作品。頭上は同時代の前衛美術集団「具体」の作家元永定正の『作品(水)』。ビニールチューブにカラーインクの液体を入れ、浮遊させている

「白と空虚」の展示室には、ピエロ・マンゾーニ、エンリコ・カステラーニ、草間彌生らの白をモチーフにした作品が。

「白と空虚」の展示室には、ピエロ・マンゾーニ、エンリコ・カステラーニ、草間彌生らの白をモチーフにした作品が。

下の2つのインスタレーションは現代作家の2022年の作品

キムスージャ『息づかい』2022年 作家蔵

キムスージャ『息づかい』2022年 作家蔵
館内の“光庭”の外面をプリズムのフィルムで包んだキム・スージャ

ハルーン・ミルザ『青 111』2022年 作家蔵

ハルーン・ミルザ『青 111』2022年 作家蔵
青い光と111ヘルツの重低音で満たされた空間。ずっとここにいたくなる

訪れたのは…金沢21世紀美術館

金沢21世紀美術館の市川紗椰

レアンドロ・エルリッヒ『スイミング・プール』 2004年 金沢21世紀美術館蔵
金沢21世紀美術館のシンボル的な恒久展示作品。水面の光を映し出す地下の“底”に立てば、アートの中に入り込んで一体化した気分

金沢という魅力いっぱいの街に、“生のアートに触れに行く”という旅する理由を増やしてくれた美術館

オラファー・エリアソン『カラー・アクティヴィティ・ハウス』2010年 金沢21世紀美術館蔵

オラファー・エリアソン『カラー・アクティヴィティ・ハウス』2010年 金沢21世紀美術館蔵

味のある街並みに、美味しいものもいっぱいで大好きな金沢。ランドマークでもある美術館は、広い敷地にある常設作品も素敵。街に愛されている感じがします

味のある街並みに、美味しいものもいっぱいで大好きな金沢。ランドマークでもある美術館は、広い敷地にある常設作品も素敵。街に愛されている感じがします

柔道の修行のため(!)1950年代、24歳で日本に留学したイヴ・クラインの写真

柔道の修行のため(!)1950年代、24歳で日本に留学したイヴ・クラインの写真

イヴ・クラインの発した言葉の数々など、人間像が垣間見える展示も貴重。

イヴ・クラインの発した言葉の数々など、人間像が垣間見える展示も貴重。

市川紗椰

ショップでは、オリジナルの青や『空虚への飛翔』のグッズに大興奮!

【展覧会DATA】
時を超えるイヴ・クラインの想像力—不確かさと非物質的なるもの
~2023/3/5 金沢21世紀美術館
石川県金沢市広坂1の2の1
10時〜18時(金・土〜20時)
休館日12/29〜1/1、1/4、1/10
観覧料/一般・当日¥1400ほか
https://www.kanazawa21.jp

市川紗椰

ファッションモデル

市川紗椰


SAYA ICHIKAWA●1987年2月14日生まれ。ファッションモデルとしてのみならず、ラジオ、テレビ、広告などで幅広く活躍中。鉄道、相撲をはじめとした好きなものへの情熱と愛の深さも注目されている。大学で学んだ美術史から現代アート、サブカルチャーまで関心も幅広い。

ニット¥28600・ワンピース¥41800・ピアス¥31900/ボウルズ(ハイク) ネックレス¥34100/エトワライト バッグ¥24200/エスアンドティ(ヴィスク) 靴¥15950/ムゥムゥヌゥ

撮影/今城 純 ヘア&メイク/千葉万里子 スタイリスト/辻村真理 モデル/市川紗椰 取材・原文/久保田梓美 ※BAILA2023年2.3月合併号掲載

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